エリート官僚はお見合い妻と初夜に愛を契り合う

 今、好きって言った……?

 聞き間違いかと思いながら見つめた先の彼は、真剣な眼差しをしている。

 静かな車内が緊張感に包まれ、胸がざわめき始めたその時。私の手の中で、不意にスマホが振動した。

【着信 司波時成】

 状況が状況だっただけに、必要以上にどきりと胸が跳ねた。

 私は伏見くんに「ごめん」と断って、すぐに応答する。

「もしもし。時成さん?」
『花純。いまどこだ?』

 いきなりそう尋ねてきた彼に面喰いつつ、私は当然の事実を告げる。

「どこって、京都です」
『馬鹿、そんなことはわかってる。京都のどこだ』
『ここは……どこだろう。タクシーの中なのでうまく説明できませんが、ホテルに向かう途中です』

 京都の地理には疎いので、車窓を眺めながら適当に答える。

 すると、初老の運転手さんが前の座席から「まもなく着きますよ」と優しく教えてくれた。

「もうすぐホテルだそうです」
『ならこのまま電話繋いでろ。俺もすぐそっち向かうから』
「えっ? 時成さん東京にいるのになに言って――」

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