エリート官僚はお見合い妻と初夜に愛を契り合う

 時成さん、ちょっと、言いすぎなのでは……?

 伏見くんが泣き出しやしないかと心配になっていると、時成さんはフンと鼻を鳴らして続ける。

「付箋を使った告白も失敗。出張に無理やりついていく作戦も失敗。いちいちやり方がセコいんだよ。それがお前の敗因だ」
「付箋? なんでそれをあなたが知ってるんですか……!?」

 急に顔色の変わった伏見くんが、時成さんに詰め寄った。

 いったい、付箋がどうしたというのだろう。

「いちいち教えてやる義理はない。直接告白できなかった自分の度胸のなさを、せいぜい恨むんだな」

 時成さんは飄々とした口調でそう言うと、私の肩をぐいっと抱き寄せて「行くぞ、花純」とエントランスの方へ歩きだす。

 その場に取り残された伏見くんの様子も気になったが、それ以上に時成さんと話がしたかった私は、彼に促されるままホテル内へ入った。

 外観は都会的なビルだったが、一歩建物の中に入ると、京都らしい和のデザインがふんだんに散りばめられた趣のある雰囲気だった。

 エントランスのすぐ脇には坪庭があり、敷き詰められた砂利のなかに、低木や手水鉢がバランス良く配置されている。

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