エリート官僚はお見合い妻と初夜に愛を契り合う
「着いたぞ。早く降りろ」
しかし現実の彼は、まるで牢屋から囚人を出す看守みたいに冷たい態度で、私をエレベーターから追い出す。
かろうじて【開】のボタンは押していてくれたけれど、もうちょっと優しい言い方ってものがあるだろう。
胸の内でブツブツ不平を漏らしつつ、彼の後に続いてマンションの通路を進んだ。
「ここだ。入れ」
「お邪魔します」
彼の部屋は角部屋だった。広々とした玄関のたたきや壁の色はグレー。廊下の床はフローリングではなく黒を基調とした石目調のフロアタイルで、スタイリッシュで男性らしい雰囲気に、どきりとした。
そういえば、独り暮らしの男性の自宅にお邪魔するなんて初めてだ。
「この食材はどうしたらいい? 冷蔵庫か?」
出されたスリッパをはいていると、先を歩いていた彼が、持ってくれていた肉や野菜の袋を掲げてこちらを振り返る。
「すぐ使うので、キッチンに置いてくだされば大丈夫です」
「了解。さっそく、お手並み拝見だな」