エリート官僚はお見合い妻と初夜に愛を契り合う

 テーブルにコトッと煮物の器を置き、彼の向かい側の椅子に腰かけた。司波さんは真顔でジッと煮物を見つめた後、綺麗な所作で箸を持つ。

 そしてまずはモツをひと口。数回咀嚼した後で一瞬動きを止め、じろっと私を睨んだ。

 な、なに……? もしかして、口に合わない?

 食べさせるまでは強気だったのに、その後も仏頂面で煮物を口に運び続ける彼を見ていたら、どんどん自信が失われていく。

 意地でここまで来てしまったけれど、やっぱり、趣味や嗜好を深く知らない初対面の相手を料理で唸らせようなんて、無理な話だったのかな。それとも、単に私の実力不足……?

 司波さんが食事する様子を俯き気味に見守っていたら、彼は後半、やけくそのようにパクパクと煮物を口に運び、まるで味わっているようには見えなかった。

 やがて器は空になったが、静かに箸を置いた司波さんの表情が和らぐ様子はない。

 敗北を悟った私は彼が口を開く前に席を立ち、苦笑する。

「ダメでしたか……。ごめんなさい、お宅まで押しかけたのに。後片付けを済ませたら、おいとましますね」

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