エリート官僚はお見合い妻と初夜に愛を契り合う
顔を上げてもさすがに笑顔は作れず、逃げるようにドアの方に踵を返した、その時。
背後でガタっと椅子の音がして、つかつか歩み寄ってきた司波さんに手首をガシッと掴まれた。驚いて振り向くと、司波さんが不本意そうに口を開く。
「うまかった。お前の料理」
「えっ?」
今、なんて……?
「だが足りない」
彼の言葉の意味がすぐには理解できず、私はただ瞬きを繰り返した。
「足りないって、量がですか? ごめんなさい、もっとたくさん作ればよかっ――」
「そうじゃない。お前の料理はうまいが、一品では足りないと言っているんだ。俺の心を動かしたいなら、毎日ここで料理を作れ 」
鋭い漆黒の瞳に射貫かれて、胸がドキッと音を立てる。
いや、なんでドキッとしてるのよ。彼を納得させるまで、毎日通いつめて料理をしろってことでしょ? あまりに理不尽な命令じゃない。
「ま、毎日通うというのは……仕事もありますので難しいかと」
「誰が通えと言った」
そう言って苛立たし気に眉根を寄せた彼に、ますますわけがわからなくなり呆然とする。
「お前、ここに住め」
「えっ?」