エリート官僚はお見合い妻と初夜に愛を契り合う
「料理で人の気持ちを動かせるんだろう? だったら、ここに住んで俺のために毎日料理をして、俺を落としてみろよ。したいんだろ? 結婚」
司波さんは挑発的なセリフを吐き、私を見下ろした。
偉そうな態度に腹が立つ反面、『お前の料理はうまい』と言われたことで、絆されている自分がいた。
それにさっきこの部屋を出ようとした時、微かな名残惜しさが胸をちくっと刺激した。
改めて考えてみると、私は彼との口げんかさえ楽しんでいたんではないだろうか。たとえばお見合い相手が司波さんじゃなく、もっと優しく紳士的な人だったなら、私はここまで素の自分をさらけ出せてはいなかった。
猫をかぶって、世間一般が抱いているイメージ通りのしとやかな女性を演じたに違いない。
でも、そんなハリボテの自分を好きになってもらったって、意味がない。本当の私を受け入れて、愛してくれる人でなければ、結婚なんてできない。
だからといって、私と司波さんの間に愛が生まれるなんて簡単には思えないけれど……私は単純に、彼にもっとちゃんと『美味しい』って言わせたい。
料理が人の心に与える作用を、身をもって感じて欲しい。