エリート官僚はお見合い妻と初夜に愛を契り合う
自分の望むビジョンがだんだんと輪郭を持ち始めてくると、私は正面から彼を見つめて口を開く。
「受けて立ちます、その挑戦」
司波さんは想定内の返事だというふうに微笑み、スウェットデニムのポケットからスマホを取り出して言った。
「負けず嫌いのお前ならそう言うと思った。じゃ、さっそく榛名先生に報告しよう」
「なんて言うつもりですか?」
司波さんを紹介してくれた父に、結果を報告するのは当然だ。しかし、私たちのたどり着いたこの微妙な関係を、いったいどう説明するのだろう。
「そうだな……『素敵なお嬢さんなので、ひと目惚れしました。急ではありますが、結婚を前提に同棲することをお許しいただけませんか』なんてどうだ?」
恩師であるはずの父に平気で嘘をつこうとしているその精神には呆れるが、真実を告げるわけにもいかないので仕方ない。
「構いません、それで」
「……ああ、それとも」
ふいに、彼の骨ばった手が顎の下に添えられ、くいっと上を向かされた。
え? なに……?
私が戸惑っている間に、じりじり顔を近づけてくる司波さんと視線が絡み、鼓動が乱れ始める。
「先に既成事実を作ってしまう方がいいか?」