エリート官僚はお見合い妻と初夜に愛を契り合う
「うん。一応結婚に向けて前向きに話は進んでて、近いうちに一緒に住む予定」
私はキッチンスケールで、今日使う材料を一つひとつ計量しながら答える。
本当は計量も生徒自身にやらせた方がいいのだが、料理初心者の多い男性クラスだし、カリキュラムはまだ始まったばかり。
まずは楽しさ重視で料理をしてもらいたいので、今だけ計量はサービスだ。
「わぁ、慎重派の花純さんが一度会っただけで結婚を決めるなんて、よっぽど素敵な男性だったんですね!」
「いや……そういうわけでもないんだけど」
言葉を濁して苦笑する私に、紗耶香ちゃんが首を傾げる。そのとき、スタジオ内に点在する各キッチンにレシピを配りまわっていたもうひとりのアシスタント、伏見健太郎くんが私たちのもとに戻ってきた。
「じゃ、どういうわけなんですか? まさか、花純さんの意思を無視して相手の男が勝手に話を進めてるんじゃないでしょうね?」
険しい顔で尋ねてきた伏見くんは、この春アシスタントになったばかり。まだ二十三歳の新人だ。
有名家政大学を優秀な成績で卒業し、魅力的な就職先はいくつもあったはずなのに、ある日私のアシスタントになりたいと直談判してきた。