エリート官僚はお見合い妻と初夜に愛を契り合う
共感してくれる紗耶香ちゃんに正直な心境を吐露していると、調味料を計っていた伏見くんが醤油のボトルをドン!と乱暴に作業台に置いた。
私と紗耶香ちゃんはそろってビクッと肩を跳ねさせ、彼を見る。
「ど、どうしたの伏見くん」
「どうしたのじゃありません。尊敬する師匠を侮辱されて、怒らない弟子がいますか! 花純さんも花純さんです。なんでよりによって、そんな失礼な男が気になるんですか?」
不機嫌そうに言い放った彼は、怖い顔をしたまま計量を再開する。怒りの最中なのに、スケールのデジタル目盛りは毎度正しい数字を刻んでいるのはさすがだ。
「尊敬する師匠だなんて、なんかくすぐったいけどありがとう。でも、どうして彼が気になるのかは、自分でも説明がつかないんだよね」
そう言ってあはは、と笑ってみるけれど、伏見くんは仏頂面のまま。助けを求めるように紗耶香ちゃんを見つめると、彼女はキッと彼を睨みつけて口を開く。
「伏見。自分が花純さんの視界に入ってないのを、人のせいにしない」
私の視界に入ってないって、どういう意味だろう。伏見くんの姿は、いつもちゃんと見えてるよ?