エリート官僚はお見合い妻と初夜に愛を契り合う
ざっと全体の説明を終えたところで、遅れていた生徒がふたり、遠慮がちに後方のドアから入ってきた。
……ふたり? 来てない生徒はひとりだけじゃ?
怪訝に覆った私は、キッチンに置いた生徒名簿に視線を落とした。
先頭の緩いパーマの男性は、見慣れた顔だ。いつもちょっと馴れ馴れしい態度の柳澤さん。で、もう一人の男性は……。
名簿から顔を上げた私は、一瞬息が止まるかと思った。一番後方のキッチンで柳澤さんの隣に立つ長身男性は、どう見ても司波さんではないか。
なぜ、彼がここに?
ほかの生徒に動揺を悟られぬよう「では、始めてください」とにこやかに告げて、さりげなく彼の元へ近づいていく。
そばまで行くと、小声で「ちょっと」と彼を呼び、教室の外へ連れ出した。
「どうしたんですか司波さん、なんで私の教室に?」
「同僚なんだよ、柳澤。で、見合いの話をしたら『もしかして俺が通ってる料理教室の花純ちゃん?』って、急に興奮しだして、おもしろそうだから俺も連れていくと。しかし、迷惑になるなら帰る」
司波さんは少々気まずそうに視線を逸らしながら言った。