エリート官僚はお見合い妻と初夜に愛を契り合う
そんなことを思いながら彼のいるキッチンを覗いたら、彼はまだ下ごしらえすら終わっておらず、ささみの筋を力任せに素手で引っ張ろうとしていた。
「わーっ。無理ですよ! 手が滑るし成功してもお肉がぐちゃぐちゃになっちゃいます!」
慌ててキッチンに割り込み、近くの生徒に包丁を借りる。司波さんに「見ててください」と告げ、包丁を動かし始めた。
「まずは筋にそって包丁で丁寧に切り込みを入れます。それから筋を下側にして……」
手順を説明しながら、目の前で実際にやってみせる。
最後、きれいに筋を抜き取ると、彼は声こそ出さないものの、わずかに見開いた目で〝やるな〟と感心してくれている気がした。
しかし司波さんはその後も問題児で、うさぎりんごに挑む手つきも危なっかしく怪我をしそうだった。包丁を持つ彼に脇からそっと手を添えて、ゆっくり斜めの切り込みを入れさせる。