エリート官僚はお見合い妻と初夜に愛を契り合う
「こうか?」
「そうそう、上手です。浅めに優しく」
そんな私たちのやり取りをそばでジッと観察していた柳澤さんが、ぽつりとつぶやく。
「花純ちゃん、司波だけに甘い」
「えっ?」
声に反応して振り向くと、いつも穏やかな表情でいることの多い柳澤さんが、不満げに口を尖らせていた。
「俺たちにはそうやって手取り足取りしてくれないじゃん。しかもなにさっきの会話。浅く優しくとか、なんかエロいし」
「別に私はそんなつもり……」
否定しながらも、たしかに手を添えるのはやりすぎたかもと自覚し、気まずくなる。ほかの生徒さんたちにも変な風に思われただろうか。
でも違うんです。司波さんがあまりにも不器用なのでつい手が出てしまっただけなんです。
心の中で釈明していると、そばでカチャン、と包丁を置く音がして、誰かにぐっと腰を抱かれた。
誰かって……司波さん⁉
目を白黒させて彼の横顔を見上げると、司波さんはなにを考えているのかわからないポーカーフェイスで口を開く。