エリート官僚はお見合い妻と初夜に愛を契り合う
「お待たせしました」
「早かったな」
意外そうに目を丸くする彼に、私はわざとらしく上目遣いをしてモジモジしながら言った。
「司波さんと早くデートがしたくて、急いで終わらせたんです」
「……似合わないことはやめろ。鳥肌が立つ」
「鳥肌はひどい!」
口ではそう言いつつも、本気で怒っているわけでない。むしろ彼からのツッコミ待ちだったので、ぶりっ子し甲斐があったというものだ。
「ところで、どこで話をするつもりなんですか? さっきお弁当を食べてしまったから、食事という感じではないですよね。時間ももう遅いし」
話しながら、腕時計を見る。
九十分の授業を終えた後も少し仕事をしていたから、もうすぐ午後九時になるところだ。
「お前が酒を飲めるなら、馴染みのバーにでも行こうと思っているが」
「特別強くはありませんが、軽く飲む程度なら大丈夫です」
「そうか。なら案内する」
司波さん行きつけのバー……きっと大人っぽい雰囲気の店なんだろう。職業柄、勉強の一環で飲食店にはよく足を運ぶけれど、お洒落なバーは一緒に行く人でもいなければ入りにくいので初めてだ。