エリート官僚はお見合い妻と初夜に愛を契り合う

「着いたぞ」

 騒がしい胸を宥めているうちに、目的地に着いたらしい。パッと顔を上げると、そこは見覚えのある巨大ビルだった。

「ここ、私たちがお見合いした……」
「そのホテルとは別に、最上階に会員専用のレストランやバーがある」
「司波さんはそこの会員なんですか?」
「ああ」

 バーというだけでドキドキしていたのに、まさか会員専用だなんて。

 気後れする私に構わず、司波さんは、明るい照明の灯るビルの入口とは別の方向に足を進め、地下へ続く暗い階段を下りていく。

「あのっ。入口はあっちでは?」
「最上階にはここからじゃないと入れない」

 そうなの? 思わずビルを見上げるが、建物と距離が近すぎて目的の階はよく見えなかった。

「秘密基地みたいですね」
「発想がガキだな」
「だって……他にいい例え思いつきませんもん」

 話しながら、先を歩く彼が重厚なドアを開ける。誰もいないがらんとした空間の奥に、エレベーターのドアが見えた。

 ますます秘密基地みたい。さっきは会員専用と聞いて一瞬気後れしたけれど、エレベーター内に足を踏み入れた瞬間のワクワク感は、テーマパークのアトラクションに乗り込んだ時のそれとよく似ていた。

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