エリート官僚はお見合い妻と初夜に愛を契り合う
司波さんがボタンを押し、足元がふわりと上昇する感覚がするのと同時に、彼がこちらを振り向いて口を開く。
「ま、確かに秘密めいてはいるな。『サンクチュアリ』という店の名も、俗世間からは切り離された聖域という意味がこめられているらしいし」
「聖域……なんか神々しいですね。そんなところに私なんかが行っていいんですか?」
「いいから連れて来たんだろ。ああでも、そういえば女を連れて行くのは初めてだな」
記憶を辿るように斜め上を見てそんなことを言う彼に、思わずどきりとした。
司波さんに恋愛遍歴を聞いてみたことはないが、私みたいに経験値ゼロというわけではないだろう。
なのに、バーに連れて行く女性は私が初めて……。ちょっとだけ、優越感に胸をくすぐられる。
胸を高鳴らせながら到着した、最上階の五十五階。ホテルのフロントにも似たラグジュアリーな雰囲気の受付で手続きを済ませると、司波さんが私をバーに案内した。
薄暗い店内はブルーの照明が灯り、深海にも夜空にも思える幻想的な空間だった。