夜のすべてでずっとすき
「……すきだよ、綾元」
「うん」
「ごめん、ずっと、すきだった」
何度も首を縦に振って、鼻から白さが出ても気にせずに振って、それから名前を呼ぶ。
「速水」
「……ん」
「わたしも、速水のこと、すき」
「すきだった。もう、すきになってる資格、ない。最低なおれでごめん」
「速水がそう思っても、わたし、どうしたって速水がすきだよ」
速水はまた夜を反射させて、前髪をぐしゃり、てのひらでつぶした。
「おれも、どうしても、綾元がすき」
夜に溶けて、夜が溶けて、朝が来る。
朝が来てしまう。
どうか今日は、眠り落ちることなく眠れますように。
速水が『もう会ってもいいよ』って言ってくれるその日まで、眠り落ちるくるしみをかき消して眠れますように。
速水の夜を抱きしめるようにして、くちから息を吸う。
くちびるの隙間から嗚咽が漏れて、呼吸が困難なものだということを知った。