夜のすべてでずっとすき



「買うの、決まってるんでしょ」



うなずく。その拍子、涙がこぼれそうになってあわててからだにちからを込めた。



涙の抑え方なんて知らなくて、足掻くように握ったてのひらに爪がくい込むばかり。



速水は、わたしが何を買うのか知っている。



それだけで、もう、しんどいよ。



「綾元」

何。

「店員、今日も、眠そう」

そうだね。

「綾元は、眠くないの」

寝れないの。

……そう。



速水は眉を下げて、夜をさらに透かす。



手をひらく。爪のあとが痛む。ううん、こんなの、ぜんぜん痛くないんだよ。速水。




迷わずレジへと向かっていって、肉まんをひとつ頼む。それから、レジ脇にあったホットの缶ココアをカウンターに置く。



すっかり顔見知りになった店員さん。



今日も眠たそうな店員さん。



店員さん、きっと、気づいてる。速水が店に来なくなったこと。



でも大丈夫。不自然なことなんてないはずなんだ。だって、わたしたち、高校生だから。



付き合っていたように見えるかもしれない。そんなことなかったけど、別れたふうに感じられるかもしれない。



だから、ねえ、大丈夫。……速水。


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