夜のすべてでずっとすき







「……おかえり」



首を傾けて言った速水は、バツの悪そうな顔をしていた。



夜が。



「ただいま」



浮かぶ。



「何買ったの」

「わかってるでしょ」

「あ、正解?」



うん。つぶやいて、缶をアスファルトの上に置いた。



夜。



「おいしいよね」

「おいしいよ」



浮かばないで。



「やっぱ、肉まんちっちゃいよなあ」

「そうだね」



透かさないで。



「おいし?」

「まだ食べてない。……でも、おいしいよ」



速水を、連れて行かないで。吸い込んで行っちゃわないで。



こんな会話したら、わたしが泣くの、わかってる?


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