夜のすべてでずっとすき
◇
「……おかえり」
首を傾けて言った速水は、バツの悪そうな顔をしていた。
夜が。
「ただいま」
浮かぶ。
「何買ったの」
「わかってるでしょ」
「あ、正解?」
うん。つぶやいて、缶をアスファルトの上に置いた。
夜。
「おいしいよね」
「おいしいよ」
浮かばないで。
「やっぱ、肉まんちっちゃいよなあ」
「そうだね」
透かさないで。
「おいし?」
「まだ食べてない。……でも、おいしいよ」
速水を、連れて行かないで。吸い込んで行っちゃわないで。
こんな会話したら、わたしが泣くの、わかってる?