【完】黒薔薇の渇愛
逃げたいのに、逃げられない。
絞り出せた声ですら、大音量で流れている芸能人の声に掻き消される。
誰か……誰か
たすけ……て。
じわりと目から浮かび上がる涙が滲んで、視界を汚したとき。
カラオケルームのドアが開かれる。
恐怖で呼吸が乱れていく中、目の前に現れたのは。
う……そ。
優理花さんだった。
「おー、優理花じゃーんお疲れ。
お前が拉致れって言った女、怖くて固まっちゃってるみたいだけど、大丈夫かなー?」
ゲラゲラと笑う金髪男は、私の顎を掴みながら言う。
「……てか、まだやってなかったの?
あんまり時間かけないでちょうだい。
もしこのこと桔梗にバレたら、大変なことになるんだからね」
「ん?桜木がいちいち口だしてくるとは思えねーんだけど」
「……その女は別。」
「へぇ……えらく気に入ってんだ?
あの桜木が」