【完】黒薔薇の渇愛



目の前にいる男は本当に桜木なんだろうか。


私のこと心配して、冷静ではいられなくなるほど思ってくれている。


桜木の息を乱したのは、紛れもなく


この私だ。




「天音ちゃん、ボタンとめるよ」


「あっ……」


言いながら、肌に触れそうで触れない桜木の綺麗な手が、外された制服のボタンをとめていく。




「こっ、このくらい自分でできるよ」


「他の男に外されただけでも俺は嫌なのに。
 天音ちゃんに触れていいのは俺だけのはずでしょ」


「答えになってない……っ」


「あっ、言ってほしいんだー?
 じゃあ言うけど、他の男に触られた上書きだよ。」


「……」


「俺って自己中だから、こんな時でも天音ちゃんを独占したいの。
 このボタンを外した男の手の感触も今起きた恐怖も、俺で塗り替えられればいいのにーって。」



「……」


「だから今日のこと、"許してあげない"」


「えっ……?どういう意味?」


「ハハッ、こっちの話。天音ちゃんにはナイショ」





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