【完】黒薔薇の渇愛
ボタンをとめ終えた彼の手は、私の唇をなぞる。
桜木の目には私しか映っていないみたい。
至近距離で男の人にジッと見つめられることが、こんなにも恥ずかしい気持ちになるなんて。
桜木に出会わなければ、たぶん一生知ることがなかった気持ちだ。
「帰ろっか。
バイクで来たから送っていってあげる」
「あの……その前に、なんで私がここに居ることわかったの?」
見ず知らずの男達に拉致られて、自分でさえ自分のいる場所を知らないのに……。
不思議がる私に、ポリポリと頭を掻いて、なんでも率直に言っちゃう桜木がらしくなく、言いたくなさそうに唇を開く。
「ここのカラオケ、目立たない場所にあるからホテル代わりに使われてたりするんだよねー」
「ホ……テル?」
「男と女がそういう事する場所。」
「……っ」
「あっ、顔赤くなってやんのー。可愛いかよ~」
「もう……からかわないで!
それで?」
「それを優理花はよく悪用してんの。
俺に近づく女とか、俺とそういう関係持った女とか。
さっき天音ちゃんが襲われそうになった時みたいなこと、優理花は平然とやっちゃうんだよねー」
「なっ……なんでとめないの?」
「……」