【完】黒薔薇の渇愛





「君って本当におバカさんだよね」



「だって……本当のことだし」


「何回言えば分かるの。
 俺が優しくできるのは、君だからじゃん?」


「……」


「天音ちゃんにしか、優しくしたいと思わない。」


「……っ」



口説き文句のようなその言葉に、酔ってしまいそう。


桜木が起こした騒ぎで、知らないうちにテーブルから落ちていた酒入りのコップが割れて、床にひろがっている。


酒の匂いが行き着いた先が、私の鼻だと思い込んでしまいそうなほど
グラグラと頭は強い酩酊感を呼び起こさせた。



「信じきれないんだったら……今から俺、天音ちゃんが言うこと、なんでもしちゃう」


「へっ……?なに言って」


「命令してよ。
 あっ、そーだ。気絶してるこの子たちに、もっとキツいお仕置きしちゃう?」


言いながら、桜木は床に倒れている男の前でしゃがみ込み、胸ぐらを掴んだ。



「……まぁだ全然……スッキリしてないんだよねー。
 天音ちゃんだって怖い思いさせられたんだから、"このくらい"じゃ足りないでしょ?」


「いい……っ!いいから桜木!!
 何かされる前に助けてもらったし……それに」


「……それに?」


「これ以上……桜木の手、汚すことしないで」


「……っ」


「それが命令……です」




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