【完】黒薔薇の渇愛
さっきよりも強く桜木の胸板を押して、少しの隙間からズルリと体を上に寄せて起き上がり。
すっぽりと埋まっていた彼の身体から逃れる。
「人の気持ち弄ぶのもいい加減にしないと……友達なくすからねっ!!」
自分でも泣いてるって分かってるから、乱暴に顔を手根で拭きながら立ち上がり、桜木にそう言った。
桜木は笑って。
「ハッ、なにその小学生みたいな言い方……。
つか友達いない天音ちゃんに言われてもねぇ……」と皮肉めいたことを言っていたけど無視無視。
この男の相手をしていたら切りがない。
私は制服のスカートを揺らしながら、倒れている奏子に駆け寄った。
「そう……し?」
奏子の口元にはかすり傷、それ以外はとくに怪我していない。
奏子の近くで倒れている男は誰なんだろうと、不思議に思ってチラチラ見ていると。
「そーれ、火炎の総長ね。」
「ーーッ」
平然と言ってのける声にゾッとした。
桜木よりも大柄な男なのに、傷ひとつついていない桜木を見て
さっきまで彼にに生意気な口を利いていた自分が怖い。
けど……なんだろう。
普段なら使わない
桜木だからこそ、生意気な口を利いてしまう自分がいる。