キミと、光さす方へ
恥ずかしいし申し訳ないし、情けないし。


真っすぐ勇人の顔を見ることもできない。


お姫様抱っこをされたあたしを見て、お母さんはどう思っただろうか?


そう思うといてもたってもいられない気分になり、頭から布団をかぶった。


すると眠ると勘違いしたのが勇人が部屋を出ていく音が聞こえてきた。


そのまま階段を下りて、お母さんと会話を始めた。


「ごめんなさいね。連れて戻ってくれて、ありがとう。これ、よかったら」


ガサガサと紙袋の音がしている。


どうやらお母さんは勇人にお礼を用意したみたいだ。


「そんな、俺が勝手にしたことなんで」


勇人の慌てた声。


その声を聞きながら、ふと十字路でのことを思い出した。


勇人はあのとき、あたしになにかを伝えようとしていた。


それはなんだったんだろう?


やっぱり告白かな……?


そう考えてカッと体が熱くなるのを感じた。


そんな雰囲気がしただけで、あたしの勘違いかもしれない。


勇人があたしを好きだなんてありえない。


自分にそう言い聞かせて、布団の中でブンブンと左右に首を振った。
< 34 / 302 >

この作品をシェア

pagetop