キミと、光さす方へ
「どうして?」


「どうしてって……」


勉強したい理由なんてなかった。


いい大学に行きたいとか。


いい会社に入りたいとか。


そんなことは考えていない。


ただ、みんなの中に入って帰ることができないから。


木は森の中にいるべきだけれど、行き帰りだけはどうしてもそこに入っていけないから。


だからあたしはここで勉強をして、時間を潰している。


「なにか理由があるのか?」


聞かれて、あたしは小さく左右に首を振った。


お願い。


これ以上踏み込まないでと願う。


もしくは勇人になら言えるかもしれない。


あたしが陰に生きていきたいワケを受け入れてくれるかもしれない。


だけど今のあたしにはまだ勇気がなかった。


「なぁ琴江……」


勇人がそう言った時、人の気配がして教室の入口へと視線を向けた。
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