俺のボディガードは陰陽師。~第五幕・白昼夢~
「この稲生忠晴、心臓が口から飛び出て停まるんじゃないかと思いましたよ…まさか、伶士さまが頼智さまのように、女性を囲うだなんて…!」
運転しながら深い溜め息をついて、落胆の様子を見せる忠晴さん。
伶士の行動が余程ショックだったのか。
だが、咳払いをして気を取り直す。
「伶士さまの行動、言動、まるで別人です。というか、頼智さまそのものです。というか…」
「というか?」
「…何となく目の焦点が合ってないような気がしました。私と視線を合わせようとしませんし。ただ後ろめたいというには、様子がおかし過ぎるのです」
「だから、私に連絡してくれたんだね」
「ええ。ただの不貞でしたら、私が後々伶士さまに小言で指導するのみです。でも、ひょっとしたらこれは、そっちの類の事件なのでは、と思いまして…私のカンでしかありませんが」
「………」
…忠晴さんがそう言うなら、その確率は高い。
身近な人の観察力が察する異変っていうのは、信憑性がある。
…だが、実際に接触してみないと、何とも言えない。