俺のボディガードは陰陽師。~第五幕・白昼夢~
「ナウマク・サンマンダ・ボダナン…アロリキャ・ソワカ!」
小技でどうにかなる相手じゃない。
そう察した私は、印を結んで出現した朱色のベールをグッと握りしめた。一気に霊力を流し込み、炎のような橙へと色を変える。
「【真陀羅朱霊華】!」
拳を一振り、襲ってくる蜘蛛の糸を薙ぎ払う。
遠心力で散った霊力のベールが糸に伝う。焼け落ちるように燃えかすとなって行く手を阻むことが出来た。
「…やはり、ただの小娘陰陽師ではないな!」
向こうも、私の何らかの情報を持っているのか?
だが、そんなもの持っていようがいまいが関係ないじゃないか。
体から滲み出る、魔力の量と圧。攻撃の速さ。…紛れもなく、向こうが格上だ。
そして、タイミングを伺う間もなく、繰り出される攻撃の一手が迫っていた。
伸びる複数のテグスのような糸が、ピンと張りつめ、刃物のように振り下ろされる。
…間合いに入るのが速い、避けきれない!
地面を蹴って右方向に飛び出す。
「…あぁっ!」
回避しきれず、テグスの刃は左の腕をザクッと擦った。同時に声もあげてしまったが、痛みに悶えている暇はない。