俺のボディガードは陰陽師。~第五幕・白昼夢~
…そんな昔話を思い出してしまうのは。
この緊張に呑まれないよう、無意識の防衛反応か。
さっきから、胸がうるさいんだよ。掌に汗もかいてしまって。
頭の中は意外と冷静なのに、手もやかましく震えて、体が無意識にビビってる。
そんな震えをグッと堪えるように力を入れて、扉をそっと開けて身を中に進める。
(うっ…)
魔力の圧を感じて顔を背けてしまう。
結界だ。
けど、ガタつきとムラがあって、表面の流れが均一ではなく、穴もある。
…ヨーテリの言う通りだ。
物で例えると、ビリビリに破れたカーテン。
音を立てないようにそっと再び扉を閉めて、その結界の穴を潜る。
こんなにすんなり入れるなんて、もはや結界ではない。
敵を油断させて引き入れるための敢えての罠か?と思えるぐらい。
玄関には、男物のスニーカーと女物のパンプスがひとつずつあった。
そして、結界内に侵入するとすぐに、人の気配を察知する。
咄嗟に身を低くし、壁を背にする。
自分の気配を殺してそこから動かず、室内の音を耳で探った。
…そこは、突き当たりのリビングか?ドアが開きっぱなしだ。