俺のボディガードは陰陽師。~第五幕・白昼夢~
一通り中をチラ見したのち、顔を引っ込めようとしたが、ベッドの方から叫び声がしてビクッと震えそうになった。
慌てて顔を引っ込めて、戸口傍に待機の体勢に戻る。
「ああっ、愛しい人…もっと、もっと…」
おまえの愛しい人じゃねえよ!と、心の中で悪態をついてしまった。
…あぁ、ちくしょう、なんだよ!愛しい人?笑っちまうな?
ったく、キモい言い回し方だ。これだから魔族というやつは…。
更にギシギシと激しく軋むベッドの音を耳にしたら、もう目も当てられない。手で目と額を覆って項垂れてしまう。
(愛しい人…)
…なぜ、伶士が『愛しい人』なのだろう。
ふと、疑問に思ってしまった。
魔族が人間を愛しい人呼ばわりするとは、思いもしない。
だって、魔族にとって人間は食糧、食い物とでしか見ていないだろう、本来。
だが、その疑問を解消する決定的なやり取りを、これから目にしてしまう。
そして…全ての謎が明らかになるのだ。
その時、ゴホゴホッと尋常じゃなく咳き込みが聞こえて、思わず顔を上げてしまった。
何が起こった?
そう思って、再びリビングの方をそっと覗き込む。