俺のボディガードは陰陽師。~第五幕・白昼夢~
(…あぁっ!)
ベッド上にいる伶士が顔を背けて肩を震わせている。
そのまま咳き込んでいることから、さっきの咳は伶士のものか?
「あらあら…吐き出してはいけないよのう、もったいない…」
花魁女郎蜘蛛扮する女が、今にも吐きそうなくらい咳き込んでいる伶士に、顔を近付けて様子を伺っているようだ。
媚びてるような、声がワントーン高いのがムカつくな。おい。
「其方は妾の『愛しい人』になるのだから…もっと、もっと受け取っておくれ…?」
妖艶にウフッと息を抜いて笑いながら、枕元に手を伸ばす。
何をする気だろうと、その様子を見守る。
手を伸ばした先は、ヘッドボードのスペースだ。一般的には小物とかスマホとか置く場所。
だが、置いてあるものは…そんな平和的なものではなかった。
思わず言葉を失う。
「妾だけではない…。皆が其方の復活を願っておるぞ…?」
ヘッドボードに置いてあったものとは、ワイングラス。
だが、入っているものはワインではない。
さっきそこで山になっていたもの。
リグ・ヴェーダの…黒い羽根だ。