俺のボディガードは陰陽師。~第五幕・白昼夢~
「あ、あのなぁ!」
「…てなわけで、今からハワイに行こう。一緒に逃げよう」
「………」
なずなの顔が無になり、遠い目をしている。
「伶士…まさかおまえがそこまでおばかだとは思わなかったぞ?…そんな現実離れした愛の逃避行を提案するなんて…」
「現実離れしてないよ。ハワイには橘家の別荘があるんだ。そこにはトーマスがいるから食事作ってくれたりいろいろ世話してくれるから心配ない。海沿いで空気も美味しいから、療養にはピッタリだ」
そして、二人で手を繋いで、海に沈む夕陽を見て…最高の癒しだと思う。
だなんて。なずなの療養がメインなのに、自分の欲望を大いに混じえてしまった。
「トーマス、何者だよ…」
「現地の人」
「いや、そうでしょうよ…」
何故か、なずなに深い深いため息をつかれる。そして、項垂れていた。
え。何かダメだったろうか。俺的には結構名案だったんだけど。
「伶士…パニってんのはわかった。けど、もう少し現実的にいこうや」
「へ?当面の生活費や旅費は俺のカードあるから心配しないでいいぞ」
「それに私、パスポート持ってない」
「は…な、何だって!」
「そこが驚愕ポイントか!」