俺のボディガードは陰陽師。~第五幕・白昼夢~
低く細い男性の声に囚われるように、足が進まなくなっていた。
感じた寒気で、無意識に体がビビっているんだろう。恐らく。
…怯むな。出だしから躓くな。
うるさく鳴り響く心臓にそう言い聞かせて、声の方へと振り返る。
ここから程よく距離が離れたところに、少し伸びた黒髪を靡かせた、同じ背丈ぐらいの男性が立っていた。
佇まいは落ち着いているように見えるが、俺を捉えるその目つきは、ギラギラと見開いていて尋常ではない。
見た目は人間なんだけど…彼の放つ空気感は、人間の出せるものではない違和感があった。
うまく表現出来ないけど、何かが違う。
この人は、人間ではない。
息を呑んでから、恐る恐ると口を開く。
「…そうでなければ、あなた、家に乗り込んできましたよね?」
「おや?気付いていたのですか?私が訪問することに?」
発言からして彼は驚いている素振りを見せるのだが…実は全然驚いていないと見受けられる。
あくまでも淡々としている。普段から冷静沈着な人間なのだろう。
…いや、人間じゃない。
魔族か。