俺のボディガードは陰陽師。~第五幕・白昼夢~
…だけど、怯んでいてはいけない。
辿々しくて、舌が突っかかりそうになりながらも、今にも弾けそうな胸の鼓動を抑えて口を開く。
「…人は、誰しも『正義』を持っていて、『悪』にもなれます。だから、争いがあるし、時には人を傷付けることだってあります」
「へぇ…」
「だから、俺も『正義の味方』と偽善者ぶるのは好きじゃありません…『正義』とは所詮、自己満足に溶けたものだと思います。何が正しくて何が間違ってるのか、わからないようなものです」
「…そう」
《…正義の味方?我々は生憎そんなものではない!》
今なら、あの時彼にそう言い返した菩提さんの気持ちがわかる。
自分は偽善者などではない。自分の『正義』を主張するためには、相手を傷付けることが、やむを得ない時もある。
それを、わかっているからだ。
この世の中、『正義』も『悪』もない。
…だけど。
やってはいけないことは、ある。
「でも…だからといって、暴力に訴えるとか、人の命に手を出すのは良くないんじゃないんですか?」