俺のボディガードは陰陽師。~第五幕・白昼夢~
この黒い翼の彼とその仲間に何があったのかは、知らない。
俺の想像を上回る凄惨な出来事に見舞われたなかもしれない。
簡単に前を向けない、心が壊れるぐらいの何かがあったのかもしれない。
でも…!
「だからと言って、恨み節を唱えながら生きていくんですか?それは何の解決にもならない」
「解決なんて望んでない。ただそんな傷付けたことすら自覚せず、のうのうと生きている人間が腹立たしいと思ってるだけだよ」
「自分がやられたらやり返すんですか?…それこそ凄惨な負の連鎖じゃないですか!」
「…負の連鎖?」
彼は目を伏せて、また「クックッ…」と笑う。
「…だから、一層の事『何も無かった』ことにしたいんだよ」
上げた視線の先は、俺ではない。
その奥の遠い向こうだ。
「連鎖も出来ないぐらい…何も無かったことにしたいんだよ?おめでたい連中の影も無くなるぐらいに、喰らい尽くす。…この世界を、ね?」
「この、世界を?」