LOVE and DAYS…瞬きのように
「もう、いいだろ?」
健吾がミサキを見下ろし、静かに言い放つ。
にらみつけるような、だけど、どこか憐れみの混じった健吾の瞳。
完全に終わりを告げる瞳だった。
まだ何か言いたそうなミサキから視線を外し、健吾は歩き出す。
「行くぞ」
「――っ…」
“行くぞ”
それはあたしに向けられた声。
それだけで胸がいっぱいになり、涙が出そうになる。
健吾はあたしの手を引いて、その場をあとにした。
なつかしい香水の匂いが、風に乗ってあたしの鼻をくすぐった。
嘘じゃ……ないよね?
夢じゃないんだよね?
まだ状況が飲み込めない頭で、あたしは現実を確かめる。
しっかりとつながれた、大きな手。
何も語らない広い背中。
この温もりは
この愛しさは
まぎれもなく本物で。
とめどなくあふれる熱い想いを、止める方法なんてもうわからない……。