悪女のレッテルを貼られた追放令嬢ですが、最恐陛下の溺愛に捕まりました


 両手で尻尾を抱くと、クッションのような柔らかさに感動した。

 ふわふわで気持ちいい。久々の癒し……!

 これは婚約者のフリを承諾した対価のひとつなのだろうか?衣食住の確保と薬師の仕事に加えて、癒しのモフモフ時間までくれるなんて夢みたい。


「梅雨の時期は陽が雲で隠れる。雨の日は部屋に来い」


 信じられないお誘いだ。なんて魅力的な提案なんだろう。

 こうして、その日を境に晴れの日は庭で、雨の日は彼の部屋で過ごすようになった。ときにはお菓子を差し入れ、向こうは気まぐれに口にしながら紅茶を飲んでいる。

 耳と尻尾を出してほしいと頼むと怒らずに聞いてくれるし、一週間経った頃からは頼まずともケモ耳状態が常だ。

 そして、変化はもうひとつ。最近、彼は私を名前で呼ぶ。


「エスターは毎日植物の世話をして飽きないのか」

「とても楽しいですよ。留守を預かっている身ですし、しっかり管理をしています」

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