悪女のレッテルを貼られた追放令嬢ですが、最恐陛下の溺愛に捕まりました
知れば知るほど、彼は冷酷な獣とは真逆の人だ。
もちろん、敵とみなした者は容赦なく殺そうとする面もあるが、周囲を震え立たせて牙をむくだけだった陛下からは遠ざかっている気がする。
どんな心境の変化だろう?
こっそり見上げると、隣の彼は少しまどろんでいた。
「眠くなりましたか?そういえば、庭でお話ししたときもよくお昼寝していますよね」
「あぁ。お前の隣は息がしやすい」
安心しているって意味かな?無防備な姿を見せない彼が素でいられる居場所になれたのなら嬉しいな。
つい、銀の髪の毛に手が伸びた。優しく撫でると、黄金の瞳が驚いて見開かれる。
「あっ、ごめんなさい。尻尾と同じ質感なのかなと気になって。ヒトの姿だと、サラサラしていて少し硬いんですね」
「お前は本当に命知らずだな。興味本位で俺に触ろうとする奴は他に居ない」
すると、骨張った長い指がこちらに近づいた。髪をとかれて、一房もてあそばれる。
触られたの、初めて。
「エスターの髪は柔らかいな」