悪女のレッテルを貼られた追放令嬢ですが、最恐陛下の溺愛に捕まりました
心なしか穏やかな声に心臓が早鐘を打ちだす。
ずっと気付かないフリをしていた。でも、これは自惚れなんかじゃないはずだ。
なんだか空気が甘い?
自覚してからは早かった。庭で過ごすのは昼休みだけで、夜も私があくびをし始めたら早々に部屋に帰されるのだが、陛下が自室に踏み込むのを許した時点で他の誰とも扱いが違う。
使用人たちからも、それが仲睦まじく映っているようで、婚約者の話が嘘だと伝えても信じてもらえないレベルまできていた。
おかしい。寵愛はフリなのよね?
表情をめったに変えないクールな彼は、なにを考えているのかさっぱりわからない。ただ、最近は撫でると喉を鳴らすし、自分から私の側に近寄って来る。
変な期待をするのはよそう。また『俺に甘い幻想を抱くな』と睨まれるかもしれない。
そして、薬室で調合をしていたある日、ベルナルド様は初めて仕事中にヒトの姿で会いに来た。
「エスター、出かけるぞ」