悪女のレッテルを貼られた追放令嬢ですが、最恐陛下の溺愛に捕まりました


 にこりともしない、強気で可愛くない女だった私をこんなふうにしたのは誰?

 冷酷非情だと謳われるベルナルド様はとても遠い存在だと思っていたのに、今は手を伸ばせば届くところにいる。心の距離も、出会った頃よりはるかに近づいた。

 従者も連れずにふたりきりでお出かけをして……こんなの、まるで本物の恋人同士みたい。


「私ってば、なにを考えているのかしら」


 カゴに詰め込んだ苗や球根を持って会計へと遠ざかる背中に、つい独り言がもれた。

 これは利害が一致した愛のない関係で、私は彼が古城にいる本当の理由を隠すために使われているだけなのに。必要がなくなったら、いつでも“切れる”間柄なんだわ。

 頭に浮かんだ甘い予感を振り払って、花壇に囲まれたベンチで彼を待つ。

 するとそのとき、聞き覚えのある可愛らしい女性の声がした。


「あら?エスターさんではなくって?」


 声の主を見て、血の気が引く。

 クリーム色の髪をハーフアップでまとめた精巧な人形のように可愛らしい小柄な女性は、カティアだ。周囲には見慣れた取り巻きたちもいる。

 記憶に刻み込まれた天敵に背筋が震えた。

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