悪女のレッテルを貼られた追放令嬢ですが、最恐陛下の溺愛に捕まりました


 今までは『城から逃げたら、匂いを追って噛み殺す』とまで言っていたのに。

 不思議なヒト。私を喜ばせたかったの?

 すると、少し不機嫌そうな声が耳に届く。


「獣の前ではにこにこしていたのに、俺の前ではあまり笑わないだろう」

「それは、ら……ラヴィスと違ってベルナルド様といると緊張してしまいますし、そもそも私は人前で笑うのが得意ではないので」


 昔から、感情を表に出すのが苦手だった。愛想を振りまいていると陰口を言われ、変な男につきまとわれたりもした。

 素を見せられるのはランジェット夫妻だけで、普段はキツい性格の悪女を演じていたのだ。

 ふいに、あごに手がかけられた。わずかに上を向かせられた先で視線が重なる。


「気を張らなくていい。お前が笑っていると、心が安らぐ」


 かぁっと頬が熱くなった。

 なんて返せばいいかわからなくなっているこちらを見て、クールな彼も楽しそうだ。手を離されて、平静を装って植物へ視線を落とす。

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