追放された聖女はもふもふとスローライフを楽しみたい!~私が真の聖女だったようですがもう知りません!~
「エマ、おはよう。よく眠れたみたいだね」

「おかげさまで。シリルは眠れました? このベッドは広いですけど、私が押しかけてしまったから、落ち着かなかったのでは?」

「そんなことあるわけがないよ。昔だって、そうだったでしょう? エマがいる方が安心できるんだ」

「なら、いいですけど」

彼女の顔色も少し良くなっている。まだやつれてはいるが、魔王城で過ごせば、改善するだろう。というか、させてみせる。

「そうだ、エマ」

「なんですか。シリル?」

「魔王の座を君に返そうと思って。父が最期に指名したのは、エマだと聞いているよ」

「いりません。前世では非常時だったので暫定措置として引き受けただけです」

予想はしていたけれど、バッサリ断られてしまった。エマはどう見ても権力を欲しがるタイプではない。

「フレディオが私を魔王にと言ったのは、その場に強いスキルを持つ相手が私しかいなかったからです。そして、あなたがまだ子供だったから暫定的に決まっただけ。シリルは立派な大人になりましたし、魔王業も真面目にこなしているのでしょう? 今さら私が魔王になる理由はありません」

エマがそれを望むのなら、魔王にならなくていいと思う。

「そうだ、エマ。なら、食堂を再開しない?」

「聖女食堂……をですか?」

エマが色違いの目を大きく見開く。

「料理は好きでしょう? 百年前の君の料理は皆に愛され、今でもこの城に残っているよ。まだまだ、作って出したい料理があるよね?」

提案した内容は、とてもいい考えのように思えた。

「もちろん、エマがゆっくりしたいというなら、それもありだと思う。命を賭して僕らを救ってくれた君にはその権利があるよ」

「食堂……」

ぽつりと呟かれた言葉は、エマの未練を示しているようだった。

「もちろん、場所は僕が用意するね」

「え、でも」

「国を救ってくれた恩人に、そのくらいのお礼はさせて」

少し迷った様子のエマは、諦めたように首を縦に振った。

「わかりました。ありがとう」

淡々と言葉を返すエマだけれど、その頬はほんのり上気している。嬉しがっているのがわかった。彼女のそういうところが、本当に可愛い。
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