追放された聖女はもふもふとスローライフを楽しみたい!~私が真の聖女だったようですがもう知りません!~


その夜、私はシリルの部屋を訪問した。昼間の話が気になったからだ。

彼の部屋の前で立ち止まり、扉をノックする。

「何もなければそれが一番いいけれど」

予め、食堂を訪れたアルフィに話を通してあったので、シリルに伝わっているだろう。

すぐに扉が開いて、シリル本人が顔を出す。

「やあ、エマ! 待っていたよ」

笑顔の彼に、部屋の奥にある長椅子まで案内された。

「夜にごめんなさい。どうしても、聞きたいことがあって……他の人に確認しても良かったんだけど、食堂では他の人の目があるし」

「まさか、愛の告白!?」

「……違います」

シリルは無駄にポジティブだ。

「じゃあ何? アルフィからは、話の内容まで聞いていないんだ。エマの相談なら、何にでも優先して聞くと決めているから」

「いや、そんな決定はしなくていいですけど……」

そこで、私は市場で耳にした誘拐事件についてシリルに話した。

「……というわけで、その真相を知りたくて。シリルのところには、何かそういった事件の話は来ていますか?」

「わお、タイムリー」

「ってことは」

「来ているよ。今日はその対策について話していたところ。調査隊も派遣済み。国境については前々から問題になっていたんだよね。キーランへ抜け出す者を見つけ次第、捕らえてはいるけれど、国境全部を常時監視することは難しいからなあ。壁を作っても、魔法で飛ばれたら意味ないし」

森の外へ出るのは禁止されているが、人間の恐ろしさを知らない一部の若い魔族は、無謀にも人間の世界へ出かけていく。

そういった者たちは、人間の世界にしかない野生植物などを持ち帰って密売していた。見つければ都度捕縛されていたが、それでも周囲の目をかいくぐって動く者はいる。

幸い比較的森に近い場所での活動が多かったため、大きな問題になっていなかったものの、目は付けられていたのだろう。
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