追放された聖女はもふもふとスローライフを楽しみたい!~私が真の聖女だったようですがもう知りません!~
出会って間もないというのに、シリルは私にとても懐いてくれていて、弟みたいで可愛い。彼の母親は他界しているらしく、そのせいか甘えん坊だ。

いつも、私にぴったりとひっついてくる。

「そういえば、魔族って動物の姿になれるんですか? 犬……じゃなくて、狐の姿になっていましたよね」

「魔族全員が獣化できるわけじゃないよ。森に近いモフィーニアには、獣人系の魔族がたくさん暮らしているんだ。他には魚人系の魔族や鳥人系の魔族なんかもいるよ」

「そうですか……ちょっと、想像がつきませんね」

私はモフモフした動物が大好きなので、獣人系の魔族が多いのは嬉しい。

凶暴な魔獣はノーサンキューだけれど、シリルの銀狐姿はとても可愛くて癒やされた。

フカフカした毛に顔をうずめたい。

でも、いい大人なので、そんなことは言えない。

「エマは動物が好きなの?」

「べ、別に。普通です」

「へぇ、隠さなくていいのに」

少年らしからぬ艶めいた表情で微笑んだシリルは、私の目の前でモフンと銀狐の姿に変化した。ああ、可愛い! なんて強烈な誘惑なの!!

銀の毛に赤い瞳の美しい獣が、尻尾を立てて私にもたれかかってくる。

欲望にはあらがえず、無意識のうちに、私の手は彼の柔らかな毛並みをさわさわと撫でてしまっていた。

「モフィーニアの上位魔族は、滅多に獣姿にならないんだけど……エマが喜ぶなら、僕が時々狐になってあげるね」

銀狐姿のまま、シリルが答える。

「……いいんですか?」

「うん。僕には、こだわりがないから」

優しい子だから、私が寂しくないよう気を遣ってくれたのかもしれない。

なんにせよ、可愛い狐をモフれるのは嬉しかった。
< 43 / 211 >

この作品をシェア

pagetop