追放された聖女はもふもふとスローライフを楽しみたい!~私が真の聖女だったようですがもう知りません!~
「エマ、こちらで困ったことはないか? 希望があれば、遠慮なく私かシリルに言えばいい」

魔王は優しい視線を向けてくるし、シリルも父親の言葉に頷いている。

至れり尽くせりの今の状況に、不満なんてあるはずもない。しかし、強いて言えば……

「あの、私、何か仕事をしたいと思うんです」

「客人が仕事などしなくてもいい。のんびり過ごしてくれ」

「いえ、あの……ぶっちゃけ、お菓子作りの時間以外暇というか、なんというか……」

「なるほど、そういうことか。とはいえ、聖女に任せる仕事となると難しいな。何かやりたいことはあるのか?」

「料理に関する仕事がしたいです。ここの料理人たちは、王族や地位の高い人専用に雇われているのだと聞きました。他の人は、外に出て店で食べていると。なので、空き部屋を借りて、誰でも立ち寄れる食堂を開きたいなと思って」

キッチン付きの空き部屋はたくさんあると、シリルに確認済みだ。

城内の食堂があれば、忙しい人でも手軽に食事を食べられると思う。

ついでに、持ち運びのできる弁当や菓子類も検討したい。

「いい案だな。とはいえ、城の上階は料理人のテリトリーだから、店を開くなら下階になるが大丈夫か? 主に移動とか……いつもシリルに運ばれているだろう?」

「うっ……!」

「というのは冗談だ。転移陣を手配しよう」

転移陣とは、転移用に描かれる模様で、上に乗ると指定された場所へワープできるものらしい。

「そんなものがあるんですか!?」

「ああ、城には所々に転移陣の描かれた転移スポットがあるのだが、言い忘れていたか?」

「ええ、聞いていません」

もっと早く教えて欲しかったな!

今までの移動は途中からシリルに運んでもらっていたので、めちゃくちゃ恥ずかしかったのだ。

あれ、フレディオについてきたシリルが、小さく舌打ちしたように見えたけれど……気のせいだよね。
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