追放された聖女はもふもふとスローライフを楽しみたい!~私が真の聖女だったようですがもう知りません!~
「光魔法、目くらまし!」

まぶしい光で相手が戸惑っているうちに、複雑な路地の奥へ逃げ込む。

国から追われている身なので、なるべく目立つことはしたくない。幸い、ごちゃごちゃした場所なので、隠れられる場所は多そうだ。

坂道の多いスラムを上へ上へと走り、頂上にあったゴミ山の陰にしゃがんで身を隠す。しばらくは、じっとしていよう。

スラム街で一番高い場所だからか、今いるところからは下の景色がよく見える。

街全体が見下ろせるし、遠くにはかつて魔獣に襲われかけた森も見えた。王都からかなり離れた場所へ来てしまったようだ。

「これから、どこへ行こうかな……」

下から吹いてくる風にさらされながら今後の予定を立てていると、ふと私の目の前に影が落ちた。

「……!」

破落戸に見つかったのかと身構えたけれど、顔を上げた先にいたのは全くの別人……スラム街に似つかわしくない身綺麗な格好をした美しい青年だった。

どこか妖艶さを纏った、銀髪に赤い瞳の彼は、転生させてくれた前世の友人に少しだけ似ている。

「だ、誰ですか?」

――まさか、私を追ってきた貴族!? 捜索が早すぎる!!

焦る私とは裏腹に、目の前の青年は呆けた表情で私を凝視し続けている。

「同じ顔、同じ声……本当にエマ……?」

消え入りそうで名前を呼ばれる。私の名前を知っていると言うことは……?

私は体をこわばらせ、早口で告げる。
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