獣人皇帝は男装令嬢を溺愛する ただの従者のはずですが!
 ……あぁ、もうだめっ!! ギュッと目を瞑り体を硬くして衝撃に備えた。
 しかし私には、いつまで経っても予想した衝撃は訪れない。
 なにかを連続して弾くような打音と、それを追うように木材がぶつかり合うガラガラという音があたりに響き渡っていた。
 ――ガラン、ガランッ。
 やがて騒々しかった音は完全に止み、周囲はシンッと静まった。
「嘘だろう」
 ガブリエル様がポツリと呟いたのを合図に、ゆっくりと瞼を開く。
 まず目に飛び込んだのは、数メートル先で手を前に突き出すような恰好で立つマクシミリアン様の背中。僅かに目線を落とすと、彼の前には崩れ落ちた木椅子が山と積み上がっていた。
 え、これって……?
 目を丸くする私を、マクシミリアン様が振り返る。
 彼の眼光の鋭さに息をのむ。
「この馬鹿!! なにをぼうっと突っ立っている!?」
 噛みつくような叱責を受け、ビクンと体が委縮する。
「ご、ごめんなさい!」
 反射的に謝罪を口にしながら、同時に理解が広がる。
 ……マクシミリアン様が、私を助けてくれたのだ。
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