獣人皇帝は男装令嬢を溺愛する ただの従者のはずですが!
「支配人、そうは申しましても主演俳優の代役など務められる者はおりません!」
 え!? これは、主演の俳優さんになにかトラブルがあったのだ……!
 耳にしてすぐに差し迫った状況が知れる。気づいた時には、階段を駆け下りていた。
 情報誌にも登場する劇場支配人のドミニクさんと製作責任者のオリバーさんが言い合う姿が目に飛び込んだ。
「ならば準主役の俳優に主演を演じさせればいい! 台詞くらい覚えているだろう!」
「主演はそれでなんとかなるやもしれません。しかし、それでは準主役の役はどうされるのですか!? 開演まで二時間弱。皆が皆、配役のスライドに対応できるわけではありません。制作責任者として、到底認められません!」
 声を荒らげるふたりを、劇団員が心配そうに見つめていた。およそ二時間後に舞台を控え、劇団員の多くはすでに衣装への着替えと化粧を始めているだろう。
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