獣人皇帝は男装令嬢を溺愛する ただの従者のはずですが!
 質問は、オリバーさんからされた。彼の目は静かなのに、まるで私という人間の内側まで見通そうとでもするかのように鋭い。
「信じていただけるか分かりません。けれど、私もまた百年の歴史を持つある劇団で主演を務めていました。劇団百年の重みを背負って舞台の中央に立ち、多くの公演を成功へと導いてきました」
 オリバーさんと私の目線が絡む。
「……」
 互いに言葉のないまましばし見つめ合い、その後、オリバーさんがフッと目線を外した。
「支配人。私は彼に本公演の主演を任せたいと思います」
「おい!? 君までどうかしているぞ!! 彼のようなズブの素人に主演など――」
「彼のあの目を前にしてもあなたが本気でズブの素人と思うなら、なおさら舞台制作については口を噤んでいただきたい! 私の責任でもって、彼を主演に指名する! 舞台づくりの総責任者は私だ!!」
 ドミニクさんの言葉を割り、オリバーさんが声を張る。
「っ、君がそこまで言うのならそうするがいい! その代わり、相応の責任は負ってもらう!」
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