獣人皇帝は男装令嬢を溺愛する ただの従者のはずですが!
 ドミニクさんは苦虫を噛み潰したような顔で吐き捨てる。言葉や態度はともかく、支配人という立場でこの決断を下すには相当の覚悟が必要だったはずだ。
「「ありがとうございます!!」」
 私とオリバーさんは声を揃えて心からの礼を叫び、ドミニクさんに頭を下げた。

 こうして急転直下、私の主演が決定した。
「これが台本だ」
 オリバーさんから、慌ただしく台本を受け取る。
「ありがとうございます! 控室をお借りして、一時間で覚えてきます! その間、部屋には誰も入らないようにしてください!」
「分かった。私たちは衣装の調整をしておく」
「……あ! それから申し訳ないのですが、どなたか上のレストランにいるマクシミリアン様に、私が合流ができなくなった旨、伝えておいていただけないでしょうか」
「承知した。マクシミリアン陛下には私から説明をしておこう」
 私の訴えには、一歩後ろに立ってやり取りを見ていたドミニクさんから了承があった。
「よろしくお願いします!」
 私は台本を手にひとり舞台袖の控室に篭もり、さっそく台本の速読暗記に取り掛かる。
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