獣人皇帝は男装令嬢を溺愛する ただの従者のはずですが!
 これを合図に劇場内……特に、ざわついていた幕裏の舞台上がシンッと静まった。実は、直前まで幕一枚を隔てた舞台上では、役者たちが慌ただしく行き交う気配が絶えなかった。怪訝に感じつつも、俺はこれを急な主演変更に付随する確認をしていたのだろうと結論付けていた。
 とにかく今は胸に生じた疑問や間幕中の違和感やらに蓋をして、始まった第二幕に意識を集中させた。
 そうして舞台上をところ狭しと駆け回るヴィヴィアンを眩しい思いで眺めていると、ふと疑念が浮かんだ。
 ……果たして【ロミエとジュリエッテ】とは、こんな話だっただろうか?
 演技が終盤に差し掛かり、疑念は確信に変わる。
『長きに渡る戦は終わり、我らの祖国は共に手を携え永久の平和へと進み始めた。愛しいジュリエッテ、我が妻よ! 私たちも夫婦となり、永遠に続く愛の道を歩み出そう!!』
 まさかラストシーンが改変され、ロミエとジュリエッテの祖国は和平を結び、ふたりは今生で愛の成就を成し遂げていた。
『おお、ロミエ!!』
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